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  3. 介護現場が抱える腰痛問題への取り組みの苦悩と解決のカギ

今回は腰痛予防対策として、様々な指針を基に当法人での具体的な取り組みの一部を紹介したいと思う。導入当初の状況や、No lifting Policyをもち管理者と現場間の相互のプレゼンテーションの大切さを伝えたい。また、国家レベルの明確な指針や、海外で実践できている実績を基に具体的な取り組みとして紹介したい。

目次

    腰痛のアンケート調査で得られた衝撃的な結果

    H22年に当法人特別養護老人ホーム・通所介護にて、腰痛に関するアンケート調査を行った結果、現在、腰痛を抱えながら仕事を行っている割合(有訴率)は66.7%であり、そのうち72.2%が業務が起因の腰痛という驚くべき結果が得られた。

    さらに「腰部に負担を感じる作業はなにか?」という問いに対しては、「移乗介助動作」や「おむつ交換時の前かがみ姿勢」という調査結果も出た。

    今回のようなアンケート結果に対して考えられるのは、日常的に腰痛予防対策を実施していなければ、どこの施設においても想定される結果であると予測できる。

    この結果を基に我々は、腰痛の原因が明確であるにも関わらず組織として職員を守るために予防対策として取り組むという事は出来ていなかった事を反省し対策を実施している。

    ノーリフトケア®の利用が浸透しなかった理由

    前述のような衝撃的な結果を受け、職員の腰痛予防として当施設において9年前からノーリフトケア®に取り組み始めた。

    この取り組みをスタートした理由はとてもシンプルで、「腰が痛くなる動作をなくすためには、人力でなくリフト等の機器を用いて負担がかからないようにしよう」という発想が起点となった。
    しかし、スタートじに直面した課題では、機器をどのように扱うのか、使い方が中心の課題となっており全く現場に浸透しない状態であった。
    その原因としては、スタッフの間では「ノーリフトケア®」という言葉だけを聞くと、機器を用いて自分たちが楽をする。という一方的な視点が先行していたように感じた。

    さらに当時は、「人の身体は人の手で行うケア方が、あたたかいケアである。」という風潮も根深かったこともノーリフトケア®の普及の妨げになった要因の一つであると考える。

    管理者と現場がビジョンを共有することの大切さ

    スタッフの腰痛予防や働く環境の改善のためにノーリフトケア®を導入したものの、思ったように浸透しない状況を改善するために管理職と現場スタッフ双方がビジョンを共有することを実践した。

    具体的な取り組みとして、厚生労働省が示しているガイドライン「職場における腰痛予防多作指針」を基に組織全体の意識改革に取り組んだ。

    主な3つの取り組みの具体例を以下に紹介する。

    1.対象者の残存機能等を活用

    残存機能を最大限に活かすという基本的な考え方であるが、ひとりのクライアントに対し、間合いを図り、声掛け、触れる事、補助する事の段階を十分に意識して関われるかどうかであると考える。

    つまり、「一つ一つの介助手法は看護・介護スタッフ・セラピストと共通認識をもって関われているだろうか?」が大切である。

    ここで注意してほしいのは、「腰痛予防対策としてノーリフトケア®を実践する事イコール残存機能を無視し、機械的な介助を選択する訳ではない」ということである。

    また、ノーリフトケア®の導入で得られた成果の一つに、「これまで、ケア提供側が時間に追われてというのを言い訳に過介助をしてしまった・・・」などというケア提供側の問題を理由に、クライアントにの残存機能を奪っていたことに気づく事もできた。

    このケア提供側の過介助は多くの介護現場で見られるのではないだろうか?
    例えば、立ち上がり介助が必要なクライアントに対し、安易に介助者が過介助するケアを選択をしてはいないだろうか?。

    本来重要なのは、対象者がどのように立とうとしていて、座位から立位になる過程でどのタイミングに介助を必要としているのか?という事を段階に分け評価し、その情報を共有し多職種と共同して、環境整備(座面の高さ・硬さの工夫や、手すりの工夫など活用する)という「身体機能を引き出すケア(立ち上がりを4段階に分けどのタイミングにサポートを必要としているのか)」を統一することである。

    2.適切に福祉用具を活用する事

    前回のコラム「保健衛生業における、腰痛予防対策の現状と課題」にも記載させていただいた重量物取り扱い基準等を踏まえ、様々な福祉機器(リフト・スタンディングマシン・スライディングシート・スライディングボード)の適切な使用目的が見えてきたように思う。

    上記のように、対象者の残存機能を活用を前提として、適切な機器を選択している。

    3.作業姿勢・動作を見直す

    ケアスタッフの身体にどのような負担がかかっているのかをイメージしやすいように、私の関わる施設の事例で解説する。
    施設の概要として30名の入居者(要介護4・5レベル)のうち、25名が移乗に介助を要す環境を設定し、1日に実施するケアをあげてみると、

    ・一日に3度の食事の際に往復で6回の移乗介助をおこなうため、25名×6回=総回数150回の移乗。
    ・トイレ移乗や入浴介助時の移乗介助を10名往復で20回の移乗。
    ・20名のおむつ交換×2回で40回1日の中で5名のスタッフでケアに当たると想定すると、移乗介助だけで1人あたり34回、おむつ交換で1人当たり16回。

    このように具体的に自身が置かれている環境を数値化することでいかに自身の身体に負担がかかっているのかを振り返ることができた。

    移乗動作の他にも床から物を拾う動作や、ベッドやストレッチャー等の高さを自身が腰部に負担がかかる姿勢にならない姿勢まで高さを調整することが大切である事などに意識を向けることも重要である。

    さらに、関連作業においては、オムツ等を破棄する際の作業姿勢やゴミ袋に入る重量への意識、収集場への移動も専用のカートの活用していく事など、これまでの当たり前と思っていた動作までも振り返る事ができた。

    まとめ

    私はセラピストとして、我々の職場を守るため腰痛予防対策を実践していくチームの一部に携わる事ができ大変嬉しく思う。チームとしてノーリフトケア®というPolicyをもって教育のツールとして活用し、現場をコーディネートする意識の向上がうまれた。

    そして、共通の目標に向けたケア提供の前提に安全を担保できているように思う。
    次回は施設内での具体的な結果等を紹介したいと考えております。

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