新たな時代の脳卒中後上肢麻痺に対するリハビリテーションの展望

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竹林崇 大阪府立大学 教授

これまでの全6回のコラムを振り返りながら、現状における課題と今後の新たな展望について解説する。
特に重要視している「エビデンス」と「療法士による1対1のリハビリテーション以外の時間に行う自主練習マネジメント」の2つのキーワードを基に、リハビリテーションの効果を最大限に高めるために、枠を超えた対策の可能性を検討する。

重要な2つのキーワード

さて,これまでのコラムの中で,新たな時代の脳卒中後上肢麻痺に対するアプローチを考える際に,著者が重要だと考えるキーワードは『エビデンス』と『療法士による1対1のリハビリテーション以外の時間に行う自主練習マネジメント』の2つである(世界の脳卒中後上肢のリハビリテーションのエビデンス(1)(2)脳卒中後上肢麻痺に対するロボット療法のこれから,を参照).

つまり,エビデンスが確立されているアプローチを,今まで1単位20分という疾患別リハビリテーション料の枠を超えて,提供できる枠組みを如何に作ることができるのかが,今後のリハビリテーションにおいて大きな課題になる.

脳卒中後上肢麻痺に対するリハビリテーションにおいて,基本的にある一定以上の練習量は大きな改善の因子と考えられている¹⁾,²⁾(近年では,練習量は麻痺手の機能・運動障害の改善に関与しないという報告もあること³⁾も留意する必要はあるが).

従って,練習量をある一定以上担保することが臨床現場に求められる.

そのような背景を鑑みると,疾患別リハビリテーション料に紐付けされた療法士による1対1のリハビリテーションだけでは十分な時間を創出することができない.

こういった背景の元,『脳卒中後上肢麻痺に対するロボット療法のこれから』のコラムに示したロボット療法の導入に診療報酬がついたのである.

ロボット療法をどのように活用するか

では,療法士による1対1のリハビリテーション以外の時間のマネジメントは,ロボット療法にだけ任せておけば良いのであろうか.

その答えは,昨今の著者らの研究でも明らかに否定されている.Takahashiら⁴⁾は,亜急性期の脳卒中後上肢麻痺を呈した対象者に対し,従来のリハビリテーションに加え,ロボット療法を用いた自主練習を実施した群と,ボバースコンセプトを基盤とした自主練習を行った群を比較検討した結果,ロボット療法を用いた自主練習群において,麻痺手の機能・運動障害の有意な改善を認めたと報告している.

しかしながら,この研究では,実生活における麻痺手の使用頻度については両群間に有意な差を認めなかったと報告している.

これは,『脳卒中後上肢麻痺におけるアウトカムの意味』のコラムにおいても示したように,対象者の幸福感やQuality of lifeに影響を与えうるICFの活動レベルのアウトカムには影響を与えづらい機器であることが解っている.

CI療法の課題と対策

では,この問題点を解決するためには,『脳卒中後上肢麻痺に対するアプローチ:Constraint-induced movement therapy(CI療法)』のコラムにも記載したように,CI療法を何らかの形で自主練習として提供できることが望ましい.

出所)TBI REHABILITATION

ただし,Pageら⁵⁾も言っている通り,CI療法は医療スタッフへの負担が大きいと一部で言われていることもあり,1日18〜22単位の疾患別リハビリテーション料の取得を求められる本邦のリハビリテーション関連病院では困難なことも予測される.

そこで,昨今,我々のグループでは,『家族実施型CI療法』⁷-⁹⁾,『病棟実施型CI療法』¹⁰、 ¹¹⁾という療法士と家族または他職種が連携し,CI療法のコンセプトを分業するシステムの提案をおこなっている.

実際に,理学療法の分野では病棟内歩行練習を家族や他職種に依頼することはよくある.その上肢練習バージョンを構造化し,システムとして日常的に稼働することが重要である.

家族実施型のCI療法については,Barzelら⁶⁾が,療法士に教育を受けた家族が週1回CI療法を実施した群と,同時間療法士が1対1のリハビリテーション(ボバースコンセプト,Proprioceptive neuromuscular facilitationをはじめとした手技を利用した介入)を実施した群を比較した際,麻痺手の機能・運動障害の改善に有意な差は認めなかったが,実生活における麻痺手の使用頻度については,家族が実施したCI療法の方が有意な改善効果を認めたと報告した.

本邦では我々のグループが事例報告レベルではあるが具体的な内容を報告しているので参考にされたい.

次に,病棟実施型CI療法であるが,こちらも回復期,急性期において,効果検証を進めている.

回復期については,前向きのケースシリーズであるが,臨床上意味のある最小変化量を超える麻痺手の機能・運動障害の向上を認めている.

さらに,急性期では,従来のCI療法よりも病棟実施型CI療法の方が麻痺手の有意な使用頻度の向上を認めた.

ただし,通常のリハビリテーション介入を実施した群と通常のリハビリテーションに加え,病棟実施型CI療法を実施した群の比較を行ったケース・コントロール研究では,麻痺手の機能・運動障害の有意な変化を認めなかったことも解っている.

このような新しい実施形態のCI療法については,現在知見が少ないため,さらに多くの研究が必要である.

それらにより,適応,効能,限界がより明確になれば,上記のロボット療法の欠点を補う強力なツールとして,今後の脳卒中後上肢麻痺に対するリハビリテーションに寄与できる可能性がある.

【解説動画】 本コラムの解説動画です。コラムと併せて視聴いただくことで、理解を深める一助にされてください。

【謝辞】 本コラムは,当方が主催する卒後学習を目的としたTKBオンラインサロンの小渕浩平氏,田中卓氏,高瀬駿氏,山本勝仁氏,佐藤恵美氏,森屋崇史氏,前田正憲氏,横山広樹,須藤淳氏,野口貴弘氏,に校正のご協力をいただきました。心より感謝申し上げます。

【引用文献】 1.Han CE, Arbib MA, Schweighofer N. Stroke rehabilitation reaches a threshold. PLos Comput Biol 4: e1000133, 2008 2.Peurala, et al: Effectiveness of constraint-induced movement therapy on activity and participation after stroke: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Clini Reha 26 (3): 209-223, 2011 3.Waddell KJ, Dose task-specific training improve upper limb performance in daily life poststroke? Neurorehabil Neural Repair 31: 290-300, 2016 4.Takahashi K, et al: Efficacy of upper extremity robotic therapy in subacute poststroke hemiplegia. An Exploratory randomized trial. Stroke 47: 1385-1388, 2016 5.Page SJ, et al: Stroke patients’ and therapists’ opinions of constraint-induced movement therapy. Clin Rehabil 16: 55-60, 2002 6.Barzel A, et al: Home-based constraint-induced movement therapy for patients with upper limb dysfunction after stroke (HOMECIMT): a cluster-randomised, controlled trial. Lancet Neurol 14: 893-902, 2015 7.堀翔平,他: 家族参加型の自主練習とTransfer packageを実施し,麻痺手の使用行動に変化を認めた一例.作業療法 38: 593-600, 2019 8.原田朋美,他: 家族参加型の上肢集中練習により希望であった麻痺手での作業を達成できた一症例.作業療法36: 437-443, 2017 9.山本勝仁,他: 脳卒中亜急性期での家族仲介型CI療法によりADL・上肢機能に改善を認めた1例.作業療法ジャーナル51: 615-619, 2017 10.山本勝仁,他: 脳卒中急性期上肢麻痺患者に対する病棟実施型CI療法の効果.作業療法,印刷中 11.徳田和宏,他.脳卒中後上肢麻痺における急性期傾向スコアデータプールの構築について.作業療法,印刷中

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