【インタビュー】アメリカを拠点に活動する理学療法士の過去・現在・未来

10月5、6日に「Intro to マニュアルセラピー(基礎・導入編)」が日本で初めて開催された。その講師を務めたのはXPERTでもコラムを執筆していただいている保坂邦彦氏。今回の帰国のタイミングで直接保坂氏に会い話を伺う機会を得ることができた。

高校卒業後にアメリカに渡り、徒手療法を学びながら現在に至った経緯や、今後の活動などについて語ってもらった。

―2日間のセミナーお疲れさまでした。日本での初開催はいかがでしたか?

参加者の皆さんがとても勤勉で、2日では足りないくらいでした。本当は3日くらいやりたいのですが、なかなか仕事が休めない方も多いらしいので。今回は導入編ではあるのですが、実技を中心に行いました。理論はすっ飛ばしていきなり「さあ、やりましょう!」という感じです。私の考えとして、できるだけたくさん触って(身体を動かして)伝えたいので、座学を1時間行った後は強化合宿でしたね(笑)
知識だけでなく、実践で使えるようにしたかったので、デモをできるだけ多く入れました。
流れとしてみててもらうことで、参加者の方がそれぞれの臨床にどのように使えるかを参考にしていただければと思って進めました。

次回の開催も決まっていて、2020年3月28日、29日に埼玉で、今回の内容の復習と新しい内容をご紹介する予定です。

―では、ここから保坂さんのこれまでの経緯などをお聞きしようと思います。高校を卒業後にすぐにアメリカに渡ったそうですが、語学は大丈夫だったのですか?

全然だめでした(笑)。
行けば何とかなるかなと思っていましたが、そんなに甘くなかったですね。
アメリカに行って、3日目にハンバーガー屋さんで注文をしようとしたのですが、なかなか店員さんに英語が通じないんです。
何回も説明して通じたかなと思い、ハンバーガーが出てくるのを待っていたのですが、出てきたのはなんと「お子様セット!?」
この時はさすがに参りましたね。ハンバーガーも小さくて、オモチャまでついてました。

こんな状態でアメリカでの生活がスタートし、3か月間の語学研修を経て、何とかTOEFLで大学入学の条件を満たすことができ、念願のテキサス州立大学でのアスレティックトレーニング(スポーツ医学)を専攻しました。

―今では流暢な英語を話される保坂さんでも、大変な苦労をされているんですね。さて、ATCを学んだあとに、PTに進まれています。日本人では珍しいケースだと思うのですが、その理由は何だったのですか?

私のATCとしての活動はほとんどが物理療法が中心だったんです。その環境は自分が描いていたイメージと少し違うなと考えていた時に、Erin O’Kelly先生(ATC/PT)に出会いました。Erin先生が行っている徒手療法のアプローチを見て「なんじゃこりゃ」と衝撃を受けたのを覚えています。
そして、自分もその道に進もうと決意しPTを取得しました。

―ATCそしてPTを取得するだけでも凄いのですが、その後はMTI(The Manual Therapy Institute)でのフェローシップを受けられています。MTIのフェローを取得するには1006時間の研修が必要でアメリカ人でも取るのが大変と聞いていますが実際はどうだったのですか?

アメリカ国内のフェローは約1700名です。理学療法士の数が20万人以上ですので、フェローの数はまだまだ少ないと思います。日本人では私も含めて3名です。
自分の中では、大変とかという意識は全くなくて、高校卒業後に渡米した時と同じように、「何とかなるっしょ」精神でしたね。

そして、国家試験の勉強が終わり、「最も自分の興味があることに対して勉強することができる」ということが純粋にうれしかったです。

あとは、元々コツコツ勉強するのが好きだったというのもあります。さらに、住んでいたテキサスはへき地だったので、遊ぶところもなく、自分を追い込むこともできました。
なので、最初の4年くらいは1年間52週のうち、49週くらいはこもって勉強していました。修行僧みたいですね(笑)。
当時は、こもって勉強ばかりしていたので、コミュニケーションは苦手でしたね。ただ、この時はコミュニケーションよりも、何とか自分の実力をつけたいという思いの方が強かったです。

今から当時を振り返ってみると、「俺ってバランス悪いな」と思います。最近になってようやく、バランスが取れてきました。

―フェローシップでの実践力(臨床)はどのように学ばれていたのですか?

私のプログラムは3年以内に440時間が課されていて、1対1のトレーニングを週1回、1年半行いました。自宅から3時間半かけて車で通っていました。テキサスなので、車で3時間半は結構近い方なんです。
このように、どうしても時間を取られてしまうので、仕事をしながらフェローから学ぶのが難しいという人が多いのも実際で、アメリカでフェローになる人が少ない理由の一つかもしれません。

ただ、フェローシップのトレーニングではしっかりと時間を取って指導してくれます。「見て盗め」とか「3年たったら教える」というような職人気質の教育ではないので、習った内容をどのように応用するかなど体系立てて教えてくれるというのは良いと思います。

―テキサスを離れ、カリフォルニアに拠点を移されていますが現在の活動などを教えてください。

今は場所(店舗)を持っていなくて間借りしてやっている状況です。
まだ、カリフォルニアに来たばかりで名前を知られていないので、地道に広げていこうと思っています。

ただ、偶然にもファンクショナルカッピングメソッドを考案された浅野吉隆(GASA代表理事)さんと知り合う機会があって、今後一緒に何かやろうという展開になっています。しかも驚いたのは、浅野さんは高校の先輩だったのもご縁だと思っています。

他には、Nexus Motion の諸谷さんとのご縁で、先日ロサンゼルスで開催されたDr.Sharmann先生のセミナーのアシスタントもさせていただきました。
Sharmann先生はご高齢で83歳なんですけど、4日ある研修もぶっ続けで教えるくらいエネルギーにあふれた方です。そして、感心するのは講義後の質問にも、いやな顔せずに丁寧に教えてくれます。きっと教えることがDr.Sharmann先生のミッションなんだと思います。

(Dr. Sahrmannと: Nexus Motion主催のLAでのLAMSSをお手伝いさせて貰った時の写真)

―最後にこれから保坂さんが考えられている活動について教えてください。

これからは、臨床とセミナーの活動を中心に広げていきたいと考えています。
自分の強みは英語を話せることなので、その強みを活かして、アメリカ、日本、その他の英語圏で私が学んだことを伝えていければと思っています。
また、臨床についてもアメリカはもちろん、日本でも行えれば良いなと思っています。
現在、オリンピック候補の選手をみさせてもらっているのですが、もし、その選手が2020年の東京オリンピック・パラリンピックに出場することが決まれば、私もトレーナーとして参加することができるので、その楽しみも今はあります。

(インタビューを行った際に保坂氏(左)、と坂元(右))

―ありがとうございます。保坂さんからお話を伺ってみて感じるのは知的好奇心が旺盛で、行動力があり、努力を継続できる方だと感じました。保坂さんの学んだ経験やこれからの臨床での活動などが日本でもさらに広がってくれればと思います。XPERTでもそのお手伝いをさせていただきます。今後のコラムも楽しみにしています。

インタビュアー:坂元大海

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