痛みの評価 「痛みに推奨される評価 ②」

これまで痛みのメカニズムや痛みの種類について概説してきました.今回はそれらの痛みに対して、現時点で推奨されている評価についてご紹介させていただきます(図1)。
あくまで個人的な見解を含むものですので、これらの評価で全てを網羅できるというわけではありませんのでご注意ください。

今回はPart2として感作・心理社会的要因の評価を取り上げていきます。

図1. 痛みに対する包括的評価

1.感作の評価

近年、中枢性感作に対する評価も着目されています。
中枢性感作とは、中枢神経系における痛覚過敏を誘発する神経信号の拡大と定義されています.
中枢性感作を評価するための方法はいくつかありますが、高価な機器を要したり、臨床ですぐに実践できないものが多いのが現状です。

そこで、推奨されるのが中枢性感作が病態に関与している包括的な疾患概念として中枢性感作症候群(Central sensitization syndrome:CSS)が提唱されており、その評価としてCentral Sensitization Inventory(CSI)が開発され臨床で用いられています。

CSIは質問紙票による簡易的なスクリーニングなので、臨床で用いやすいのが特徴です。
CSIの原版は25項目ですが、最近ではCSI-9という短縮版(9項目)が開発されていますので、臨床で用いる場合にはこちらを利用しています(図2)。
中枢性感作(症候群)に起因する痛みを有していると治療に難渋することが多いため、様々なスクリーニングツールの中でも、このCSIは臨床で優先して使用すべきツールになるといえます。


図2. Central Sensitization Inventory-9
(Nishigami T et al.: Development and psychometric properties of short form of central sensitization inventory in participants with musculoskeletal pain: a cross-sectional study. PLOSONE, 2018.)

2.心理社会的要因の評価

心理社会的要因の中にも情動的側面、認知的側面、社会的側面の要因に分けられます。

①情動的側面の評価

情動的側面の評価としてはHospital Anxiety and Depression Scale (HADS) **やTampa Scale for Kinesiophobia (TSK)** といったものがあります。
HADSは不安に関する尺度と抑うつに関する尺度から構成されていて、痛みが強くなるとHADSの点数が高くなることが報告されています (Bouhassira D, Letanoux M, Hartemann A (2013): Chronic pain with neuropathic characteristics in diabetic patients: a French cross-sectional study. PLoS One, 8:e74195.)。

また、運動恐怖をみる尺度としてTSKがあります。
TSKは17項目の質問で構成されていて、カットオフ値が37点に設定されています。
つまり、37点以上あると運動に対する恐怖が強いことが伺えます。
ただし、以前のコラムの中でも触れましたが、「対象者が何に対して恐怖を抱いているか?」が大事になるので、そういった意味ではTSKだけでなく、患者固有の恐怖を伴う課題を明らかにしていくことが本質になります。

②認知的側面の評価

次に、認知的側面を評価する尺度であるPain Catastrophizing Scale (PCS) とPain Self Efficacy Questionnaire (PSEQ) **について紹介します。 PCSは痛みの破局的思考をみる尺度で、Fear Avoidance Model**における痛みの負のループの入り口になるものとされています(図3)。痛みを経験した後に、その痛みをどのように捉えるか?が岐路になり、痛みをネガティブに捉える傾向にあると、痛みの負のループに陥りやすいことがわかっています。

PCSは「その痛みをどのように捉えているか?」を13項目の質問から明らかにしていくもので、カットオフ値が30点に設定されています。
つまり、PCSが30点以上であると、痛みそのものの問題よりも、痛みをネガティブに捉える傾向が痛みを慢性化させている要因であることを示唆します。
ただし、この場合でも「痛みをネガティブに捉えてしまう理由はなんなのか?」を明確にしていくことが重要となります。


図3. Fear Avoidance Model

PSEQは痛みに対する自己効力感を表す尺度で、痛みがある中でどれだけ課題をこなせるかを「主観的に判断する」尺度です。
痛みがある状況でも「家事や買い物,趣味を行うことができる」という判断をする方もいれば、痛みがあることで「動けない、買い物にも行けない、趣味もやめている」という判断をする方もいます。

このような痛みに対する対処をどのようにしているかを、10項目の質問から識別するのがPSEQです。
私たちが膝に痛みを有している方たちを対象に行った研究でも、治療介入の初期にPSEQが低い方たちは、その後5ヶ月間治療を行っても活動性が改善しにくいことがわかりました。

つまり、どれだけ治療によって一時的に痛みの改善が得られたとしても、その後「動く」という選択を対象者自身がしない限り、活動性が十分に上がっていかないということです。
そういう意味では、早い段階から「この人は痛みの対処をどのようにしてるんだろう?」ということを明確にしておくと、その後の行動変容を促しやすいのではないかと考えています。

次回はADLに対する評価を取り上げていきたいと思います。

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