筋膜へのアプローチが痛みに効果を示すメカニズムとは?

筋膜へのアプローチはなぜ痛みに効果的なのでしょうか?
そのメカニズムを理解せずに、何となく効果が出るので筋膜を学ばれ実践されている方には是非、今回の内容を参考にしていただければと思います。

どのようなアプローチを用いるにしろ、その成果を最大限に得るために、痛みや障害を引き起こしている本質的な要因を明確にするために、評価、アプローチを行うことがとても大切です。

この評価とアプローチがシステマティックに整理されてきているのも、筋膜アプローチの魅力でもあります。

そのため、筋膜アプローチは疾患ベースの単一的なアプローチではなく、クライアントベースドでその方に適した介入が可能になるのです。

今まで臨床の現場でなんとなく行っていた手技でも、少しずつ知識と臨床が重なり合った時に充実感とともに、臨床成長期に突入します。

今回は、みなさんの臨床成長期への一助となるべく、筋膜が痛みに効果的な解剖学・生理学的理由をまとめていきたいと思います。

筋膜の解剖生理学

筋膜は欧米ではfasciaと呼ばれ、結合組織(髄膜・胸腹膜・脂肪組織・靭帯・腱など)の一部に含まれています。これら全体を筋膜と訳されていることも多く、欧米の著書の和訳本などの理解の際には少し注意が必要と言われています。

結合組織の1つである筋膜は、浅筋膜・深筋膜・筋外膜・筋周膜・筋内膜に分けることができ、運動器の痛みに対する臨床介入で対象となるのは、深筋膜(筋外膜含む)であることがほとんどです。

さらに、結合組織として捉えた膜(fascia)は、三次元的基質を形成して、すべての器官に連続しているのです。深筋膜のさらに内部では、髄膜は神経系を取り巻き、胸腹膜などの内臓膜は体腔を取り囲んでいます。
痺れや、体内の不調なども膜の連続性を考慮すると介入の可能性が広がってきます。

深筋膜は筋を内包しており、全身の筋をボディスーツのように包んでいます。それ故、第二の骨格とも呼ばれていて、身体の支持性にも影響しているといわれています。

この第二の骨格である深筋膜が、痛みに効果的な理由が大きく2つあります。

その鍵を握るのが、「機械的受容器」「ヒアルロン酸」です。

筋膜と機械的受容器

筋膜を含むfasciaは機械的受容器を豊富に含んでおり、人が痛みを感じる解剖学的部位のほとんどはfasciaとも言われています。

さらに、痛み受容器である自由神経終末だけでなく、パチニ小体やルフィニ小体も多く埋包されており、膜で連続性がある筋周膜内には筋紡錘も存在します。

そのため、
・痛みや痺れの解消
・関節不安定感の改善
・筋出力の向上

が期待できます。

筋膜とヒアルロン酸

もう一つの重要な要素にヒアルロン酸があります。
ヒアルロン酸は、深筋膜に存在する線維芽細胞で生成されており(Klein DM,1999)、結合組織内に豊富に存在します。

ヒアルロン酸の働きは、
・皮膚の湿潤作用
・筋や腱の滑走補助作用
・筋組織の損傷回復
などが挙げられます。

ではなぜ、ヒアルロン酸が重要なのでしょうか?
その秘密はヒアルロン酸の特性に隠されています。

ヒトは運動をすると、ヒアルロン酸の分泌が増加します。
通常、ここで吸収されていくのですが、過度な運動などで多く分泌されたヒアルロン酸が吸収されないときに、体内の酸塩基バランスが酸性に傾いてしまいます。
ヒアルロン酸は酸性になると粘性が増大する性質があり、筋の滑走を助けるヒアルロン酸が固まってしまいます。

さらに、
・四肢や体節の可動性低下はヒアルロン酸濃度を上昇させる (Stecco C,2011)
・1週間以上の不動は、ヒアルロン酸濃度を上昇させる (Okita M,2004)
・炎症組織でヒアルロン酸の増加が観察される(Cowman MK,2015)
・損傷した骨格筋のヒアルロン酸含有量は上昇する(Torihashi,2015)

といった報告もあり、
運動によるOveruse だけではなく、外傷や不動、手術歴などもヒアルロン酸の機能低下に影響を及ぼす可能性があることがわかっています。

上図のように、最初のヒアルロン酸の粘性増加による機能低下では、痛みとして現れないことがほとんどです。
ヒトは、局所の機能低下を代償するように他の分節で過剰な運動が要求するといわれています。
それを繰り返して、代償が効かなくなった時点で痛みとして出現します。

そこで、問診は既往歴を病名で抽出するだけではなく、Overuse、外傷歴、廃用・不動(ギブス固定の有無など)、手術歴などを丁寧に問診していくことで、その方のカラダのストーリーを把握することがかなり重要になってくるのです。

痛みの真の原因は患部から離れた部位に存在することも

今の治療がうまくいかないときは、もしかすると、最後の結果として痛みが出ている部位に介入しているからかもしれません。
私たちが見つけ出したいのは、初期の代償を生んだ機能低下部位なのです。

もし、困っている症状が腰痛であっても、最初の筋膜機能低下が頚部にある場合の介入は頚部、足関節にある場合は足関節から介入することで、腰痛を改善できたりすることも珍しくありません。

これが離れた場所を治療する筋膜の秘密の1つなのです。もちろん、必ず離れた部位がいいわけではないです。要は、現在の症状を引き起こした機能障害を筋膜評価によって抽出していくのです。

次回は、その筋膜の機能低下に対して、どのように対応していくのかを考えていければと思います。

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