痛みを伴う治療でみられるクライアントの認知と行動変容

1.痛みを伴う治療を行うことについて

皆さんは疼痛を伴う施術に関してどのように考えられますか?
痛みを伴う治療については「組織を傷める」「クライアントへの負担が大きい」など否定的な考え方も少なくありません。
一方で私は、痛みを伴う治療が機能障害だけではなく、これまで述べてきた自己についての学習を深めるプロセスや、不安の解消、主体性の獲得にも手段として有効な場合があることも数多く経験して来ました。
今回は、この痛みに関する治療の私の捉え方をご紹介します。

ご注意いただきたいのは、万人に通用する方法ではなく、ケースによっては有効な手段だということは忘れないでください。
どのようなアプローチも相手によって、そして使用するセラピスト自身が使いこなせるかどうかによって効果は変わって来るものですから。

2.痛みを伴う治療を利用した認知と行動の変容

痛みを伴う治療を行った際に見られるクライアントの認知と行動の変容について、いくつかのケースをご紹介いたします。
まず、「日常生活でまた傷めるのではないかという不安」を抱えているクライアントにおいては、

・痛みを伴う治療をしても身体を傷めない
・これくらい痛い刺激は日常のなかで経験することがない
・「生活のなかで使っても大丈夫かも」

などがみられるでしょう。

次に、「どれくらいの強さでセルフケアをしてよいかわからない(傷めることが怖い)」というクライアントでは

・痛みを伴う治療をしても身体を傷めない
・「自分で行い程度なら大丈夫かも」

などの認知の変化がみられると考えられます。
これらより、クライアントが痛みを伴う治療を受けることにより、「できれば受けたくない」という心理が生まれ、「セルフケアを行えば、痛い思いをしなくて済む」ことも体験するでしょう。

このように、苦痛から逃れたいという欲求は、時に前向きな目標設定より強力であることを活用し、セルフケアをすれば楽になるという体験から行動の習慣化へ促すことへ活用することが可能です。
学習理論による「負の強化」…不快な刺激が減ることによる行動の増加)

また、セルフケアをサボっていたら治療が痛いままという体験をすることによっても、健康を保つ責任は他ではなく自分にあるという意識が生まれます。
帰属理論による「内的帰属」化・・・行動変容が難しいなら認知の変化を狙う)

これらの、学習理論、帰属理論をしっかりと理解し、可能なら行動変容を目指し、難しければ認知の変化を目指すことが重要であると考えています。

臨床において、みられるケースとして、回復に伴ってクライアントは症状の強さと治療の痛さを天秤にかけるようになり、受診の間隔を自発的に開けようとします。
これによって依存の長期化を防ぎますが、定期的なメンテナンスを希望する場合はもちろん受け入れるようにしています。

3.痛くても良くなることを理解してもらう

痛みを伴う治療をセラピストが必要と判断して行った場合のクライアントの反応としては「受けたくないと思う」ことで他の治療院に変えることも考えられます。
この場合、他院に変わって症状が改善すればよいのですが、良くならない場合に「どこに行けばよいのか不安になる」のではなく、「痛い治療は嫌だけど、あそこに行けばよくなる」と思い出してもらえることは重要だと思います。

このように、クライアントにとって、嫌々ながらも行くべきところがあるというのは救いになるというのは、開院以来何度も経験してきました。
「もうこりごり」と思われることもありますが、不安に陥って路頭に迷うことがないようにできたらという願いを持っています。

4.痛みが伴う治療を行うためには

私たち身体の専門家はセラピストの加えた刺激が、クライアントの身体に影響を与えてどのように変化しているのか、認知的にどのように受け止められているのかを瞬時に判断して、変化させていかなければなりません。
そのためには触診(モニター)の感度が保てるよう、身体を使って楽に操作できる技術を身につけておく必要です。
それが私が最も大切にしている徒手療法における身体操作としての「楽操」であり、楽操の基本は「握手」であると考えています。

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「くつぬぎ手技治療院」

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ブログ:手技療法の寺子屋
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