糖質制限ダイエットの落とし穴

1.自己紹介

皆さま、初めまして。Personal Body Management株式会社トレーナー兼管理栄養士の吉村俊亮と申します。
今回よりXPERTにて栄養に関するコラムを書かせていただくことになりました。

私は現在、日本国内外にて活動をしており、国内では福岡県を中心にプロアスリートから一般の方々のトレーニング&栄養サポートを個人・チーム問わずおこなっております。また、教育機関にて非常勤講師としてスポーツ栄養学を担当させていただいていたり、大学にてジュニアアスリートの健康と栄養についての共同研究をおこなっております。

その他、国内にいるときはセミナーや講演会など大勢の方の前でお話をさせていただいております。
海外では、トップアスリートの専属管理栄養士として、献立作成から調理・提供などアスリートの食と栄養に関する部分のサポートしております。

本コラムを通して、正しい栄養に関する情報や皆様のお役に立つ情報、さらに、私の活動の状況などをご紹介させていただきます。

2.日本人の食事と人の体を構成する栄養素

糖質制限ダイエットについて考えていく前に、まずは日本人の食事と体の構成成分についてご紹介します。
厚生労働省が策定している『日本人の食事摂取基準2015年版』では、日本人の食事の理想的な栄養素のバランスは摂取エネルギーに対して、たんぱく質が13%以上、脂質が20~30%、糖質が50~65%内に収まることが望ましいとされています。

この『日本人の食事摂取基準』は、国民の健康の維持・増進を図る上で摂取することが望ましいエネルギー及び栄養素の量の基準を示すものになります。
つまりは、「上記の栄養バランスで摂取することが健康を維持・増進するためには良いですよ」と国が言っています。

それでは、人の体を構成している栄養素を見てみましょう。
人の体を構成している栄養素(水分を除く)は、たんぱく質が45%程度、脂質が40%程度、糖質が約1%程度、残りがビタミンやミネラルと言われています。

食事と体を構成する栄養素を比べたときに、本来なら一番多く摂取している糖質は、体の中には一番蓄積されない栄養素だということが分かります。これは、摂りすぎた糖質が脂質に変わるため、糖質として体に残ることがほとんどないからということもあるのですが、糖質は適正量摂っていれば体には蓄積されずにエネルギーとして利用されます

3.糖質制限の最大のメリット

糖質制限の最大のメリットは何といっても短期間で痩せられることではないでしょうか。
では、なぜ糖質を制限することで体重は減りやすくなるのか考えてみましょう。

その理由は単純に摂取エネルギー量が極端に減るからです。上記でも少し書きましたが、日本人の食事は1日の摂取エネルギー量における糖質からのエネルギー量が50%以上はあります。1日に2,000kcal摂取している人であれば、1,000kcal以上を糖質から摂取していることになります。この糖質のほとんどをカットすれば単純に摂取エネルギー量が減るため、体重も減りやすくなります。

また、糖質をカットする代わりにたんぱく質食品を多く摂ると言われたりもしますが、たんぱく質は食事誘発性熱産生(摂取した栄養素が体内で代謝される過程でエネルギーの燃焼がおこること)が約20%と非常に高く、糖質と比べても約4倍程度の消費量があるため、体に蓄えようとするエネルギー量は実際に摂取しているエネルギー量よりも低くなります。

4.糖質制限を長期間続ける人の経時的変化

このように糖質制限は短期的なダイエットとしては、効果も期待できるため、時と場合によっては1つの方法として良いかと思います。

しかし、糖質制限をおこなう人の中には、長期間おこなう人もいます。そういった方がよく言われるのは、『食事も全然食べていなくて、運動も毎日しっかりしているのに痩せない。』ということです。ひどい方は痩せないどころか徐々に体重が増えていっているという方もいます。

この原因はダイエットがエネルギー収支の問題以外から大きな影響を受けているからです。
食事からの摂取エネルギーが少なくなると、相対的にすべての栄養素の摂取量が少なくなります。

エネルギー代謝に関係している栄養素で言えば、糖質、アミノ酸(アミノ酸に関しては足りている方は多いです)、水溶性ビタミン(B₁、B₂、B₆、B₁₂、ナイアシン、葉酸、ビオチン、パントテン酸)になります。これらの栄養素はATPの生合成に大きく関わるものです。

5.糖質制限を長期でおこなうデメリット

糖質制限を長期でおこなうと、上記でも書いた通り体重がだんだん落ちにくくなる傾向にあります。
1つの原因として、TCA回路の始まりの物質であるオキサロ酢酸(糖質を原料として作られる)の量が低下することで、TCA回路が上手く回らなくなり、ATPの生合成がされにくくなることです。

また、TCA回路では、代謝の過程でH⁺が発生し、この水素が電子伝達系へと運ばれ、段階的に代謝されることで、多くのATPが生合成されます。

TCA回路が上手く回らないということは、電子伝達系で代謝されるH⁺が少なくなってしまうため、上手くATPの生合成ができません。この結果、体重が落ちにくくなります。

6.長期で糖質制限をしていた人への食事改善案

長期で糖質制限をしていた人は、体内のグリコーゲン量が少なくなっている状態で、糖質を材料に作られる物質の量も少なくなっていると考えられます。
そのため、糖質を多く含む食品を食べてもらうようにしなければいけませんが、急激に糖質の摂取量を増やすと高確率でリバウンドをします。

リバウンドをさせずに、正常な状態にするためには、長期的に少しずつ糖質量を増やすことです。例えば、最初の1週間はいつもよりもごはんを1口多く食べる。2週目はごはんを2口多く食べる。3週目は3口多く食べるといった感じです。
糖質制限を長期でやってしまうと、食事を正常に戻そうとしたときに時間と根性が必要になります。

糖質制限ダイエットについて、今回は体重に関するデメリットしか伝えていませんが、他にも多くのデメリットが存在します。糖質制限ダイエットをする場合やクライアントに指導する際は、それらのことを考慮したうえで、本当に実行すべきかをよく考えたうえでおこないましょう。

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Personal Body Management株式会社
http://pbm555.com/

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