田中創の痛みコラム 2-(2)痛みの伝導路

今回は痛みの「感覚的側面」と「情動的側面」に関してご紹介いたします。
このメカニズムを理解することで、痛みを抱えるクライアントと接する際にそのように痛みをとらえ、向き合い、アプローチする可が明確になります。

(2) 二次侵害受容ニューロン (外側脊髄視床路・内側脊髄視床路)(2) 二次侵害受容ニューロン (外側脊髄視床路・内側脊髄視床路)

患部に加わった痛みの情報が一次侵害受容ニューロン(Aδ線維・C線維)として伝えられると、その情報は脊髄後角で二次侵害受容ニューロンにバトンタッチされます。その際、Aδ線維から伝えられた情報は外側系の経路で、C線維から伝えられた情報は内側系の経路として上行していきます。

外側系の経路は外側脊髄視床路もしくは新脊髄視床路ともいわれ、腹側基底核という部位を介して一次体性感覚野(S1)や二次体性感覚野(S2)へと痛みの情報を伝達します。体性感覚野は、主に痛みの“感覚的側面”を担っています。

内側系の経路は内側脊髄視床路もしくは旧脊髄視床路ともいわれ、髄板内核群という部位を介して、主に大脳辺縁系へ痛みの情報を伝達します。大脳辺縁系は痛み刺激が持つ意味を解釈する痛みの“情動的側面”を担っています。


図1.痛み情報の伝達:外側系・内側系

外側系と内側系から上行した痛みの情報が最終的に統合されることで、痛みの“認知的側面”が生まれます。


図2.痛みの伝導路
(住谷昌彦・宮内哲:痛みのメカニズム:痛覚と痛み認知. OTジャーナル 47(1): 10-15, 2013より引用)
LSTT:外側脊髄視床路 ASTT:内側脊髄視床路 SRT:脊髄網様体路

痛みの感覚的側面とは身体的な痛み感覚に関わっている場所です。どこが、どのように、どの程度痛いか?という、いわゆる身体に感じた痛みの情報を識別する際に働く場所です。痛みの情動的側面とは痛みによって生じる不快感や不安など、感情の変化に関わっている場所です。痛みの認知的側面は、過去に経験した痛みとの比較や、どの程度痛みに対して注意を向けているか?という、その時に感じている痛みの意義を分析・認識するのに関わっている場所です。

つまり、Aδ線維➡︎外側系➡︎体性感覚野を通して伝えられた痛みの情報は、身体にとって危険な情報をいち早く識別するために働いています。その痛みの情報が生体にとって危険な情報であるほど、それをできるだけ早く認識する必要があります。先天性無痛症候群のように、生まれつき痛みを感じない体質だと、身体が傷つけられていることに気づかずに、それが重大な問題を引き起こすことがあります。

対して、C線維➡︎内側系➡︎大脳辺縁系を通して伝えられた痛みの情報は、痛みに関する感情の変化や過去の痛みとの比較を通して痛み情報の意味(意義)を与えます。痛みを心地良いと感じる一部の方を除いて(笑)、多くの方は痛みを不快に感じると思います。その不快な痛みの情報の原因が、自身にとって原因不明なものであるほど、痛みの負のループに陥りやすくなります。

そのため、私たちが患者さんの痛みをみていく際に気をつけなければいけないのは、痛みが加わった時には、この外側系と内側系がどちらも賦活しているということです。

「どこが痛いですか?」「どんな種類の痛みですか?」「どのぐらい痛いですか?」という外側系にかかわる情報だけでなく、「その痛みによって不安に感じていることはありませんか?」「その痛みを感じたときにどんな感じがしますか?」「どういう風にその痛みを対処するようにしていますか?」という内側系にかかわる情報も聴取することが重要です。このあたりの具体的な内容については「6. 痛みの評価」のところで取り上げていきたいと思います。次回は「2-3. Pain matrix」についてです。

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