田中創の痛みコラム 2-(1) 「痛みの伝導路」について

2. 痛みの伝導路

(1) 一次侵害受容ニューロン (Aδ線維・C線維)

痛みコラム(2)では、痛みの神経生理学として痛みの伝導路について紹介します(図1)。

患部に加わった痛みの刺激は、一次侵害受容ニューロン(Aδ線維・C線維)に存在する侵害受容器で感じ取られ、脊髄後角に伝えられます。この痛みの情報は脊髄後角で二次侵害受容ニューロン(外側系・内側系)にバトンタッチされ、最終的に脳へと伝えられます。二次侵害受容ニューロンは脊髄視床路とも呼ばれ、脊髄後角から脳(視床)までの痛みの経路のことを担っています。

脳に伝えられた痛みの情報は、その内容(身体的な痛み感覚、痛みによる不快感・不安、過去の痛みと比較…など)に応じて脳内の様々な部位で識別されています。このような痛み情報を処理している脳領域のことをPain matrix(ペインマトリクス)といいます。

図1. 痛みの伝導路
(Malfait AM and Schnitzer TJ. et al:Towards a mechanism-based approach to pain management in osteoarthritis. Nature Reviews Rheumatology 9(11):654-664, 2013.より改変引用)

今回のコラムでは、一次侵害受容ニューロンについてご紹介します。患部に加わった痛みの刺激は電気信号に変換されることで興奮(活動電位)が生じます。この電気信号が脊髄後角まで伝えられるのですが、その線維としてAδ線維とC線維があります。


図2. 一次侵害受容ニューロン
(慢性疼痛管理学授業資料より改変引用)

Aδ線維は髄鞘を持つため有髄神経とも言われます。この髄鞘が痛みの情報を素早く伝えるために重要な働きをします。髄鞘と髄鞘の間にはランビエ絞輪という約1μmの隙間が存在します。ランビエ絞輪があることで、患部に加わった痛みの情報(活動電位)が跳躍伝導として脊髄後角にいち早く伝えられます。つまり、身体にとって危険な痛みの情報(組織損傷に伴う痛み)であるほど、Aδ線維が瞬時に脊髄後角に伝える役割を担っています。

Aδ線維と違い、C線維は髄鞘を持たないため無髄神経と言われます。髄鞘を持たないため、髄鞘やランビエ絞輪もありません。その直径も0.5〜2μmと細いため、伝導速度も0.5〜2m/secと遅いのが特徴です。患部に加わった痛みの情報によってAδ線維がいち早く情報を伝えるのに対して、C線維は数秒かけて脊髄後角へ痛みの情報を伝えます。足を壁にぶつけたり、つまづいて転んだときに、瞬時に感じる痛みとは別に、少し遅れて感じる鈍い痛みが生じるのはこのC線維による痛み情報の伝達によるものです。


図3. 線維による伝導速度の違い
(慢性疼痛管理学授業資料より改変引用)

Aδ線維が伝える痛みの情報は急性痛に、C線維が伝える痛みの情報は慢性痛に関与するといわれます。その理由は、二次侵害受容ニューロン➡︎pain matrixと痛みの情報が伝達され、最終的に脳内で処理される場所に所以があります。次回は、そのことについて触れていきます。

← トピックス一覧に戻る