私の治療観① ~主として慢性運動機能障害に対する臨床について~

1.はじめに

人体における構造と機能は互いに関連し合うものとされています。同じく、哲学(理念や想い)と行動も互いに関連し合っているといえるでしょう。セラピストが行う治療行為という行動の背景には、どのように人間を捉えているのか、クライアントにどうなって欲しいかという願いがあります。行動として用いられる知識・理論・評価・介入方法は重要な要素ですが、その背景にある哲学があいまいなままでは、行動する方向性が定まりません。すると、周囲の情報に翻弄されたり、ただ流行りの方法を追いかけ続けたり、根無し草になって放浪の旅を続けることになるかもしれません。

このレポートは手技療法家としての私の治療観、つまり人間をどのように捉え、どのようにクライアントに働きかけようとするのか、という行動の方向性を示したものをまとめています。激痛治療家、苦悶式(くもん式)、S手(エステ)などとも呼ばれていますが、受けている相談の中心である肩こりや腰痛など慢性運動機能障害の治療に対し、私がどのような考えを持って臨床にのぞんでいるのか。

あくまで個人的なスタイルであることをお断りした上で、みなさん自身それぞれのスタイルを作っていく上での参考にしていただければ幸いです。

2.要点

私にとっての臨床とは、手技療法によって機能障害を回復へと導きつつ、クライアントが自分の心と身体について「学習する機会」を作ることであり、学習を通して主体性の回復を目的とするものである。

 ・慢性症状を有している人は、時に不安で、自分の身体に対する自信を失っていることがある。
 ・経験上、自分への理解が深まるつれ、自信と安心を得て主体性が高まりやすい。
 ・主体性とはこの場合、クライアントが人生をどのように生きたいのか自分で考え、そのために必要なヒト・モノ・
  サービスを自分で選択し、行動に移していくことを指す。
 ・慢性運動機能障害が回復していくプロセスを、クライアントが主体性を回復していくための、自己学習のプロセス
  と軌を一にさせる。

私の施術を行う際の短期的目標として、「体性機能障害の回復、再発予防の働きかけと共に、再発しても動揺して不安にならない心を獲得する」ことを掲げています。さらに、気を付けているのは、「何をされているのか、受けていてわかりやすい治療を目指す」ということで、わかりやすくするために下記の要点を特に意識した治療を行っています。

 ・自己学習するには、クライアントにとって何をされているのかわかりやすい治療のほうがよい。
 ・わかりやすいのは、発症部位かそれに近接する部位である。
 ・よって症状を手がかりとしながら対象範囲を広げていく展開の仕方で進める。
 ・制限の芯を捉えて明確な感覚入力を行い、機能障害の存在を実感させる。

以上、今回は第1回目として私の治療に対する考え方の概要をお伝えいたしました。次回は治療に対する考え方をさらに深く掘り下げてみたいと思います。

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