1980年代になると,Woolfらによる「中枢性感作(脊髄興奮性の上昇)」やBennetらによる「神経障害性疼痛」の概念が提唱されました。

中枢性感作とは,脊髄後角での二次ニューロンの興奮性の変化により,通常では痛みの刺激にならない程度の刺激(触るなどの刺激)を痛みと感じてしまうものです.その結果,痛覚過敏やアロディニアが発生すると考えられています。

神経障害性疼痛とは,体性感覚システムに影響を及ぼすような直接的な損傷や疾患によって発生する痛みと定義されています。特徴として,障害された神経の支配領域にさまざまな痛みや異常な感覚が発生します。通常,痛みを感じる領域の感覚が低下し,ときに運動障害や自律神経系の異常(発汗異常,皮膚色調の変化など)を伴うこともあります。

前回は痛みの歴史1960~70年代にフォーカスしました。(前回の記事はこちら)ゲートコントロールセオリーの起源や国際疼痛学会(IASP: International Association for Study of Pain)設立の経緯など、世界的に「痛み」に対しての動きが生まれた経緯をご紹介しました。 今回は1980~90年代をご紹介します。基礎研究の成果によって痛みに関するメカニズムが徐々に解き明かされていく様子が理解できます。

痛みの歴史1980年代

1980年代になると,Woolfらによる「中枢性感作(脊髄興奮性の上昇)」やBennetらによる「神経障害性疼痛」の概念が提唱されました。

中枢性感作とは,脊髄後角での二次ニューロンの興奮性の変化により,通常では痛みの刺激にならない程度の刺激(触るなどの刺激)を痛みと感じてしまうものです.その結果,痛覚過敏やアロディニアが発生すると考えられています。

神経障害性疼痛とは,体性感覚システムに影響を及ぼすような直接的な損傷や疾患によって発生する痛みと定義されています。特徴として,障害された神経の支配領域にさまざまな痛みや異常な感覚が発生します。通常,痛みを感じる領域の感覚が低下し,ときに運動障害や自律神経系の異常(発汗異常,皮膚色調の変化など)を伴うこともあります。

痛みの歴史1990年代

1990年代は基礎研究の発展が著しく,痛みや鎮痛に関する様々なメカニズムが明らかになってきました。その一方で,基礎と臨床の乖離を指摘する声も挙がり,現実的に痛みによって労働生産性の低下などが問題となったことから,2000年代には「痛みの10年宣言(Decade of Pain Control and Research )」が始まります。これは,痛みを生物医学的モデルから生物心理社会的モデルで捉えていこうとする試みで,局所(疾患,病態,侵害受容刺激)だけでなく,精神・心理社会的因子まで含めて,幅広い視点で痛み(痛み行動)をみていこうというものです(図3)。

図3:痛みの五重円モデル 松原貴子:疼痛理学療法の診療トピックス. 理学療法学, 40(8): 519-522, 2013より引用

近年の傾向

この痛みの10年宣言以降,2010年代には人を対象とした包括的な視点での臨床研究が増え,多くの有用な知見が出されています。特に,f-MRIを用いた研究が発展したことにより,これまでは難しいとされていた個人の痛み体験を,一部客観化することができるようになりました.研究手法の限界から,さらなる挑戦が今後もまだまだ必要な領域ですが,基礎研究の有用性を生かしつつも,臨床病態との乖離を念頭に置いた上で,目の前の対象者と向かい合っていく必要性があるのだと思います。

次回は,そのような課題も踏まえつつ「痛みの捉えかたの変遷〜近年の痛みの捉えかた〜」について「痛み治療の歴史 Part 2」と題して,1900年代から近年の痛みを捉える上でのトピックスを取り上げようと思います。

*本内容は慢性疼痛管理学コース (牛田享宏先生) から内容を一部抜粋しています。

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